【彗星の旅 2】

 ある銀河で、彗星は 表面が全て氷で覆われている星を見つけました。
彗星は首をかしげて考え込みながらつぶやきました。
「うーん。ちょっと寒すぎるかな。でも、一応聞いてみるか。」

 彗星は、ためらいがちに氷の星に話かけました。
「こんにちは 氷の星さん。……・あの 『命の種』は要りませんか?」

 すると、氷の星は 疲れ切ったという様子で大きなため息を一つ吐き、ゆっくりと首を振りました。
「残念だけど、遠慮しておくわ。今まで何度も『命の種』をもらったけれど、みんな失敗してしまったの。
ここは恒星からちょっとばかり離れ過ぎているらしいの。
それに、ほら見て。わたしのすぐ近くにあんな大きな体をしてくっついている星があるでしょ。あいつのせいで、わたしの軌道が安定してくれないのよ。だから、せっかく途中までうまくいった『命の種』もみんなダメになってしまうのよ。」

「そうですか。それは残念ですね。……それじゃあ さようなら。」
彗星は、
『そうか、近くに大きすぎる星がいてもだめなんだな。覚えておこう。』
と考えながら、氷の星に別れを告げました。


 次に見つけた星は、それほど若くないようですが、大きな海を持っていました。けれど……。
「うん? おかしいなあ。ちゃんと大気と陸地と海があって、結構時間がたっている様子なのに、生き物がいるふうには見えないなあ。」

 彗星は不思議そうに首をかしげながらその星に近づきました。
「こんにちは。あの……『命の種』は要りませんか?」

 彗星の問いかけに、今度の海の星も残念そうに首を振りました。
「いいえ。残念だけどやめておくわ。わたしには『生命』を育てるのは無理だから。」

「えっ? そんなに豊かな海があるのに? 何故?」
彗星が驚いて尋ねると、海の星は仕方ないのよという表情を浮かべて答えました。
「つまりね、見てわかると思うけど、わたしは月を持っていないのよ。
だから、自転軸の変動がとっても大きいの。
おかげで気候の変動もすごく大きくて、せっかく生まれた『生命』が育ってくれないのよ。
月があれば、自転軸を安定させることができるのに。残念だわ。」

「そうなんですか。それは残念ですね。……それじゃあ さようなら。」
彗星は
『そうか、月のある星じゃないとだめなんだな』と
また一つ条件を覚えて、海の星に別れを告げました。

 その次に見つけた星では、彗星はタッチの差で他の彗星に先を越されてしまいました。
まだ若いその星を見つけて大喜びで彗星が声をかけようとしたその瞬間、別の方向から来た大きな彗星が猛烈な勢いでその星に突っ込んで行ってしまったのです。

「えっ、あっ、うそ!」
彗星は、目の前で他の彗星がその若い星と衝突する閃光を目撃し、爆発音を耳にしました。
そして、
「なんだかなあ……。まあ 早い者勝ちと言えばそうなんだけど。
いきなりってのは強引すぎるよなあ。」などとブツブツつぶやきながら、そこを立ち去りました。

 こうして、『命の種』を引き渡すべき星を探して、彗星は幾つもの銀河を巡りました。
中にはもうあとちょっとで条件を満たしてくれる星もたくさんありました。
でも、そのあとほんのちょっとが『命の種』から『生命』を育てていく為には大切なのです。
その為、彗星は少し残念に思いながらも、それらの星の横を黙って通り過ぎて来ました。
また、条件にピッタリの星を見つけても、もうそこには『生命』が育っていて、彗星の力は必要ない場合もありました。
 彗星は、星探しの旅にだんだん疲れて来ていましたが、それでも、どこかできっと自分の『命の種』を必要としてくれるはずの星があるはずだと自分を励まし その長い長い旅を続けました。


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