【彗星の旅 3】

 そして、ついに彗星は希望通りの星を見つけることができました。

 その星はまだとても若いらしく、至るところで火山が噴火を起こしています。
ですが、同時に豊かな水を湛えた海も見えます。
月も持っています。近くに大きすぎる他の星も見当たりません。

 彗星は、ちょっとドキドキしながら、その星に声をかけました。
「こんにちは 若い星さん。
あの、まだ誰もあなたに『命の種』を与えていないなら、ぼくがあげてもいいですか?
 あなたを ぼくの旅の終着点にしてもいいですか?」

 すると、その若い星はうれしそうに笑って答えました。
「ありがとう、彗星さん。ええ、まだ誰もわたしに『命の種』を運んで来てくれていないわ。
だから、お願い、あなたの『命の種』をわたしにちょうだい。」

「よかった。それじゃ。」
そう言うと、彗星は一直線にその若い星を目指して突き進んで行きました。

 星の大気に触れた瞬間、彗星は激しい衝撃を受けました。

 彗星は、バーン!と、大きな音を立てて幾つかのかけらに分かれ、その一つ一つが燃えさかる炎の固まりとなりながら、海を目指して落ちて行きました。
そして、海に落ちた瞬間、彗星は今度は逆に一気にその体が冷やされるのを感じました。

「これで……ぼくの旅が……使命が……終わる。」
彗星は、衝撃と急激な温度の変化でもろくなった体がより細かく分かれて海に散らばっていくのを感じながら、静かに眠りにつきました。

 彗星のかけらから『命の種』が流れ出て行きます。
ゆっくりと時間をかけて、それはその星の『生命』になっていくことでしょう。




「ねえ、目を覚まして。」
彗星は、呼びかけてくる星の声に意識を取り戻しました。

「えっ?」
驚いた様子の彗星に、星はおもしろそうに笑って言いました。
「あら、何を驚いているの? 『命の種』を与えてそれで終わりじゃないのよ。
あなたはわたしと一つになって、これから生まれる『生命』たちをちゃんと見守ってくれなくっちゃ。」

 そう言われて彗星は気がつきました。
今自分がこの星の全てを自分の体として感じることができることに。
大気を、海を、大地を、そしてこの星の中の熱い力まで感じることができるのです。

「本当にぼくはあなたと一つになったんだね。」
すると、星はカラカラと楽しそうな笑い声をあげて言いました。
「そうよ。あなたはわたし、わたしはあなた。
彗星の時のあなたの使命が終わって、わたしたちの新しい使命、ううん、新しい夢が始まったのよ。」

「ぼくたちの……新しい夢……。
うん、そうか、そうなんだ。ぼくたちの新しい夢かぁ。それはとても素敵だね。」
そう言うと、彗星も幸せそうににっこりと笑いました。


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