【ロビン、ロビン、ロビン♪ 5】



「あ……こんにちは……おばさん」
「こ、こんにちは。あの……ボクたち、何かした?」
恐る恐る挨拶をするケディとラディ。すると、そのアオガラおばさんは、それに「はいな」と簡単に応えた後、いきなりお説教を始めました。
「いいかい。あんたたち。けんかするにしても、最低木の上か上空だけにしなさい。地面に落ちてまで続けるバカがどこにいるのよ。幸い、今つかまった相手が人間だったから、そのまま逃がしてもらえたけど、これがもしこの家の気の荒い猫の方だったら、あんたたちどっちも今頃は噛み殺されていたわよ」

「ゲッ!」
「マジ?」
猫は、はっきり言ってラディたちロビンにとって最大の天敵です。しかも気の荒い猫とは最悪としか言いようがありません。

 アオガラおばさんは、ゾッとしている2羽の若いロビン兄弟に、声をひそめて、さらに恐怖を煽るように言いました。
「いい。この家に住んでいる猫はねえ、本当に凶暴な恐ろしい猫なのよ。庭に下りてくる小鳥たちを襲うのが何より大好きってくらいにね。それで、前にここにいたロビンも、その前にいたロビンも、み〜んなそいつに噛み殺されちゃったのよ。あんたたちも、もしここに住みたいんだったら、よっぽど慎重にならなくちゃね。今みたいな幸運は二度とはないわよ」

「ひぇぇ〜!」
「ゴクッ! 前のロビンも、その前のロビンも?」
びびりまくるラディ。息を呑み確認するように聞き返すケディ。アオガラおばさんは大きくうなずきました。
「そう。そしてたぶんその前の前のロビンもね」

「ど、どうしよう、ケディ兄さん? ここ、まずいよ」
すっかり怖くなったラディが兄に訊ねました。すると、ケディは小首をかしげて少し考えた後、ラディに言いました。
「仕方がない。それじゃ、やっぱりここは兄さんがもらうことにするよ。ラディ、おまえはボクよりももっとうっかりしている。だから、おまえではそんな気の荒い猫のいる場所では、絶対に暮らせないからな。もっと安全で美味しいえさがいっぱいある場所がきっと他にあるはずだが、そこはおまえに譲ろう。兄として、ボクは可愛い弟のおまえの為にこの危険な場所で我慢することにする」

「……ケディ兄さん……」
『なんて優しいいい兄さんなんだろ。イモ虫横取りされたくらいで恨んでいたなんて、ボクは本当にバカだった』
ラディは、ケディの言葉に感動してその瞳をうるうるさせました。
「ケディ兄さん、ありがとう」
そう礼を言うラディの頭を優しくなで、ケディは慈愛に満ちた瞳で大きくうなずきました。
「兄弟だものな。一番小さな弟のおまえを守ってやるのも兄としての責任だ。さ、ラディ。おまえはもっと安全でいいテリトリーを探しに旅立ちなさい。ボクはここからいつでもおまえの幸運を祈っているから」

「うん。ありがとう。それじゃ、兄さんも猫に気をつけて頑張ってね」
そう言ってラディは愛されている幸せに包まれて飛び立っていきました。それを、大きく翼を振ってケディが見送りました。

 ラディが見えなくなると、アオガラおばさんがケディに声をかけました。
「うまくやったわね、あんた。意外に策略家?」
「えっ?」
その言葉に、不思議そうにケディは首を傾げました。
「だって、弟を危険から守ってやるのも兄の責任だよ。だから、可愛いラディにもっと安全でいい場所を譲ってやったんだ。どこか変?」

「えっ? あんた…………。あはははは」
アオガラおばさんは、ケディが冗談でなく本気でいいことをしたと思っていることに気づいて笑い出しました。
「本当にロビンってのは……。ま、いいわ。とにかく私もこの辺に住んでいるのでこれからよろしくね。……あんたは猫にやられずできるだけ長生きしてよ」
そう言うと、アオガラおばさんは黒いアイラインのある目を悪戯っぽくウインクしてみせました。




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