【有翼狼の伝説 第一章・蒼き翼を持つ者 8

「えっ?」
アマデオが思わず驚きの声をあげると、テアはそれを目で制して続けた。
「あなたたちは、私をこの群れに残し平穏で安定した生活を送らせることが私の幸せだと判断した。
でも、どうしてその判断自体が間違っているかもとは疑ってみなかったの? 
私が何を幸せと感じ、何を不幸と感じるのか。
それは私にしかわからないことじゃないの? 
………私は、私には、安定した生活より上に、もっと大切な想いがあったのに」
そこでテアは一旦言葉を途切り、こみ上げてくる感情の高まりを鎮めるように、ギュッと目を閉じた。

アマデオが心配そうに見守っていると、やがてテアはゆっくりと目を開け、再び話し出した。
「それに、幸せは他から与えられるものではなくて、自分の力でつかむものだし、どう生きるかも自分で決めることだわ。
そう……もし仮にエアハルトが私に一緒に群れを出て欲しいと望み、私も彼と一緒に行く道を選んで…
それが危険で果てしない旅の始まりで、結果、途中でついていけなくなって倒れてしまったとして、
私がここを懐かしがって後悔の中に力尽きるのか? 
それとも、最後まで彼のそばにいられて幸せだったと感じて終われるのか? 
そんなことその時になってみなければ私自身にさえわからない。
でもたとえどちらになったとしても、それは自分で決めた事の結果。全て自分自身の責任として受け入れられたはずよ
……後悔さえもね」

「テア…」
つらそうな表情でアマデオがつぶやいた。
だが、テアはそれをはねつけるように首を振った。

「同情はいらないわ、アマデオ。
だって、父やあなたが、私とエアハルトの仲を引き裂いたわけではないんですもの。残念だけど彼の心の中に私はいなかった。
そのことは昨日はっきりと思い知らされたから。
昨日、父の発表の後、心配して彼を追ってここに来た時でさえ、
彼は……空に魅入られていたわ。
いつもと変わらない穏やかな表情で、でも、とても遠い瞳をしてね。」





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