【有翼狼の伝説 第一章・蒼き翼を持つ者 11

「それは!!」
テアは驚きに大きく目を見開いた。
そんなテアに、アマデオは大きくうなずいて言った。
「そうだ。どんなに抑えていても想いがあふれ出してしまう時はあるんだよ。
特にこれが最後って時にはね。
…確かにやつは遥か遠くの何かに惹かれていた。
でも、だからといって誰をも愛せないってはずはないだろ。
エアハルトが群れのみんなに好かれていたのは、ただ勇敢なだけでなく思いやり深い優しいやつだったからだろ。
……テア、やつの心は決して閉ざされていたわけではないんだよ。」


アマデオの言葉に、テアは見る間にその瞳をうるませた。
テアは一旦それを隠すようにうつむいた。
だが次に顔をあげた時、その表情は喜びと決意にあふれていた。
「なら、私は。アマデオ、それが本当なら、私、行くわ。
彼の、エアハルトの後を追うわ。
もう私には彼にしてあげられることは何もないと思っていたけど、彼の心の中に私の居場所があるのなら、私が彼の孤独を癒してあげられる。
……ううん、そうじゃない。
私が彼と一緒にいたいんだわ。
好きな相手のそばにいたい。
それが私のなによりの願いだったんだもの。
だから私は私自身の幸せのためにも彼を追うわ」

 テアがそう言うと、アマデオは穏やかな笑みを浮かべてうなずき、
「そうか。うん、それがいい。
……さあ、そうと決まればすぐにでも追いかけた方がいい。
時間がたてばたつほどやつとの距離が開いて、追いつくのが大変になる。
テア、後のことは心配しなくてもいい。
君の父上には俺から伝えておくから」
とテアを急かした。

「ええ。ありがとう、アマデオ。大好きよ。
…それじゃ、さようなら」
「ああ、気をつけて」

俊敏な動きで山を駆け下りて行くテアの後姿を見送りながら、アマデオはふっと小さく息を吐いて笑った。
「大好きよ……か」






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