【有翼狼の伝説 第一章・蒼き翼を持つ者 12

 テアの姿が見えなくなると、アマデオは顔を上げ、視線を遠い山の向こうへと移した。
その時、アマデオの背後から聞きなれた足音が近づいてきた。
「……あれも、行ったか」
「はい。フォルカー」
アマデオはフォルカーを振り返ることなく、視線を遠くに向けたままうなずいた。

「そうか。…そなたの言うとおりになったな」
そう言ってフォルカーが大きく息を吐くと、アマデオはフォルカーを振り返り、首を振りながら言った。
「いえ。初め、テアはエアハルトの後は追わないと言い切りました。
やつの心の中に自分がいないのなら追いかける意味がないと。
また、やつが心の翼を広げて走りぬける邪魔をしたくないとも。
……正直意外でした。」

「ほぉ、そんなことを」
フォルカーは少しうれしそうに目を細めてそうつぶやき、アマデオもまたにこやかな表情でうなずいた。
「はい。
私はテアが激情のままエアハルトの後を追うと言うのなら、どんなことをしても説得して諦めさせるつもりでいました。
テアもやつも不幸になるのは目に見えていましたから。
ですが、追わないと言い切るテアの誇り高さ意志の強さを知って、私は逆に彼女は行くべきだと思いました。
あの強さがあれば、お互いを負担にすることなく共に生きていけるのでは…と」
「……そうか。そうだな。
……それに、どちらにしてももう後は祈るしかあるまい。
あれももう走り出してしまったのだから。
後は、あれが無事にやつと再会できて、共に幸せになってくれることを祈るしか…な」
「はい」

 フォルカーは、アマデオの横に並び立つと、顔を上げ、青く澄んだ空を見つめて言った。
「……アマデオ、この空はどこまでも高く青く広がり、わし達とあれらを繋いでいる。
どんなに離れようとも、見上げる空は一つじゃ。
わし達はここで、あれらはあれらの行く先で、互いに精一杯生きて行くだけじゃ……この同じ空の下でな」

「はい」
そう言って見上げるアマデオの目にも、空はどこまでも高くどこまでも青く広がっていた。







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