【有翼狼の伝説 第一章・蒼き翼を持つ者 10

だがやがて、アマデオは幾たびかためらった後、思い切ったようにテアに声をかけた。
「……テア。もう、俺から話してもいいかな?」
「えっ、ああ、ごめんなさい。…いいわ」
ハッと我に返った様子でテアが振り返りうなずいた。
「そうか。
……テア、君の考えはよくわかった。
俺や君の父上ややつ、俺たち雄の勝手な思い込みが間違っていたってことも。
だが、テア、君も一つだけ大きな間違いを犯しているよ」

「間違い?」
いぶかしそうにテアが聞き返すと、アマデオはうなずいた。
「そうだ。
…テア、俺たちが君のことを本当のところで理解できていなかったのと同時に、君も、やつの、エアハルトの気持ちを理解できていない。
何故やつの心の中に君がいないと思うんだ? 
やつが迷わなかったからかい? 
だが、それは君の前で迷わなかっただけで、やつの内心がどうだったかはわからないじゃないか。
それに、もし俺がやつの立場でも、やはり君の前では迷っているようなそぶりは決して見せないよ。
君は怒るかも知れないけど、俺たち雄はやはり愛する者を守り幸せにしてやりたいと思ってしまうんだ。
だから……自分にその資格がないと判断したら、黙って身を引くさ」

「でも」
反論しようとするテアを、アマデオは首を振って止め、続けた。
「テア。やつはここを去る時、君の父上に、『テアに幸せにと』と伝言を頼んだそうだ。
いいかい、テア。やつは他には誰のことも言わなかったんだよ。
ただ、君のことだけを言葉にした。
君に幸せになって欲しいと、ただそれだけを……。
それが、どういうことなのか君にはわからないのかい?」






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