【モーランの頼み 2】


「でね、ボク、そのカンショーの上を飛び回って一生懸命調べたんだけど、どこにも出口をみつけられなかったんだよ。それで、そのことをモーランさんに言うとすっごくがっかりした顔をして、大きくため息をついたんだけど……それでも『ありがとうよ。世話をかけたな』ってきちんとボクにお礼を言ってくれたんだ。どう? えらいと思わない? がっかりしながらもちゃんとお礼を言えるって」

「そうだな」
シェルンの言葉にマンボウじいさんがうなずきました。シェルンもそれにうんうんと何度も大きくうなずき返しました。
「でしょ。それでボク、そんなモーランさんの為にどうしてもなんとかしてあげたくなっちゃったんだ。……それでマンボウじいさんのことを思い出して、こうして呼びに来たってとこ。マンボウじいさんの魔法ならモーランさんを助けられるでしょ? 同じマンボウ、仲間だし、助けてあげてよ。お願い、マンボウじいさん」
シェルンはそう言うと、翼を合わせマンボウじいさんに向かって頭を下げました。

 マンボウじいさんは嬉しそうに笑って答えました。
「ああ。いいとも。わしの魔法が仲間の役に立つならこれほど嬉しいことはない。……それにしても、おまえは優しい子だな、シェルン。そのモーランを助ける為にわざわざわしを探しにやってきてくれるなんて」

「いやぁ、別にそんな。えへっ!」
マンボウじいさんに褒められたシェルンは、照れくさそうに頭を掻きました。

「……それで、その環礁はどの方向にあって、ここからどのくらい離れているんだ? おまえさん、どのくらい飛んできたんだ?」

「えっ?」
マンボウじいさんに聞かれ、シェルンは不意打ちをくらったように目を大きく見開き、それから困ったようすで首をかしげながら言いました。
「うーん、マンボウじいさんを探してここまであちこち飛び回りながら来たからなあ。だいたい背中にお日様を感じてたから、カンショーに行くには逆にお日様目指せばいいと思うけど……。それで、昨日の昼からお日様が沈むまで飛んで、今日は朝からさっきまでずっと飛んできたから……」

「おやおや。そりゃまたずいぶんおおざっぱな説明だな」
マンボウじいさんはシェルンの説明に苦笑しました。それから、
「さて、どうするか……」
と、その円く小さな目であたりを見回しました。

 その時、ちょうど少し離れた場所をいつものイルカの群れが通りかかりました。
「おっ、これはちょうどいい。シェルン、すまんがあのイルカたちに声をかけて、リーダーにちょっとわしのところへ来てくれるように頼んでくれんか?」
「ん? うん、わかった。待ってて」
マンボウじいさんに頼まれ、シェルンはイルカの群れへと飛んでいきました。

「お〜い、マンボウじいさ〜ん。どうしたのぉ〜?」
「ボクたちになんか用事?」
「なになに?」
シェルンの伝言を聞いて、早速フィンフィンたちイルカの子供たちが元気よく海面を跳ねるように泳ぎながらやってきました。

「おやおや。わしはおまえさんたちのリーダーに聞きたいことがあったんだがな」
マンボウじいさんが、にぎやかなイルカの子供たちに笑ってそう答えました。イルカの子供たちは、お互いに顔を見合わせて『でもねえ』と合図しあい、それからまた一斉にマンボウじいさんに話しかけました。
「でも、リーダーは群れの先頭にいないといけないし」
「そう。リーダーがこっちへ来たら、仲間全員こっちへ来ちゃうよ」
「そそ。群れの行く方向が変わったら困るでしょ」
「うんうん。だからボクたちが聞きにきたの」

「なるほど。だが、おまえさんたちは群れから離れても大丈夫なのかい?」
マンボウじいさんの問いに、イルカの子供たちは大きくうなずいてにっこり。
「うん。ボクたちならちょっと離れても群れの流れに影響しないし」
「へへっ、離れすぎて怒られるのもしょっちゅうだしね」
「うんうん。それに、群れから離れても、ボクたち仲間はいつも一緒!」
「そそ。一緒、一緒。だからまとめて探してもらえて、まとめて怒られて、まとめてごめんなさいするの」
「ねっ!」
「うん!」

「あはは。そうかそうか」
マンボウじいさんは声をあげて楽しそうに笑い出しました。それから、
「ならば、世話をかけてすまんが、おまえさんたちのリーダーに聞いてきてくれ。実はな……」
マンボウじいさんは事情を説明し、シェルンから聞いたモーランの閉じ込められている環礁のある場所について、リーダーに心当たりは無いか教えてほしいのだと、イルカの子供たちに言いました。

 イルカの子供たちは、マンボウじいさんの話を聞き終えると、
「わかった。リーダーに聞いてくるよ」
「ちょっと待っててね。すぐ戻ってくるから」
と、再び元気よく海面を跳ねながら自分たちの群れへと戻っていきました。マンボウじいさんはそんなイルカの子供たちの様子を優しい目で眺めました。






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