【みつばちのルー 1】

 ある山のふもとに、今年も養蜂の巣箱が置かれるようになりました。
このあたりに咲いている花の蜜をたくさん集めるために、毎年春になるとやってくるのです。

 巣箱の中では、何万匹もの働きバチたちが
忙しそうに動き回っています。
仕事はとてもたくさんあります。
巣の中の掃除や、幼虫の世話、蜜ろうを出して巣作り、
スズメバチなどの敵からの見張り、
そして、花の蜜を集めに飛んで行ったり、
帰ってきた仲間から蜜や花粉を受け取って巣に蓄えたり。
みんな本当に一生懸命働いているのです。

 そんな中に、ルーという一匹の働きバチがいました。
ルーはなぜか生まれつき片方の羽が歪んでいました。
そのため、自分ではまっすぐ動いているつもりでも、
知らない間についフラフラと動いてしまいます。
それで、ついいろいろと仲間に迷惑をかけてしまうのです。
でも、周りのみんなは、決してそのことでルーを責めたりはしませんでした。
それは、ルーが本当にいつも一生懸命に働いていることをみんな知っていたからです。

 その日、ルーは初めて巣箱から遠く離れた場所まで、蜜探しに行く仕事をすることになりました。
ルーは、他の蜜探しの当番の仲間が勢いよく巣箱から飛び出して行った後を、
フラフラと、でも一生懸命ブンブンと羽音をたてながら飛んで行きました。

 それを、見張り当番の仲間たちが少し心配そうに見送っていました。

 ルーは、おいしい蜜のある花がたくさん咲いている場所を探して、
あちこち飛んで回りました。
そして、ようやく小学校の花壇にいっぱい花が咲いているのを見つけました。
「よかった。初めての蜜探しを失敗しないですみそう。」
ルーはうれしそうに甘い花の蜜を吸い、足に花粉をつけると、
この場所をみんなに教える為、大急ぎで巣箱へとまた戻って行きました。

 ミツバチたちは、花の咲いている場所を見つけると、
不思議なハチダンスを踊って その場所を他の仲間に教えます。
近い場所ならまあるい円で、
それより遠い場所の時は8の字に回って。
その回り方で方向と距離がわかるのです。

 巣箱に戻ったルーも、さっそくダンスを踊り始めました。
でも、片方の羽が歪んでいるルーには
このダンスは少しむずかしすぎました。
ルーのダンスは、知らないうちに、
ルーが伝えたい場所とは全然違う方角の、
しかもずっと遠くの場所を示してしまったのでした。

 ルーのダンスを信じた仲間たちは、
間違って全然違う場所を目指して一斉に飛んで行ってしまいました。

 ルーは、すっかり動転してしまいました。
「違う。そっちじゃない。ああっ、どうしよう?」
今帰ったばかりでとても疲れているルーでしたが、
すぐにみんなを止める為に必死に後を追いかけて行きました。


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